移住と暮らし

石垣島の生活費の実態|食費・電気代・移動費の目安と抑え方

2025年10月20日

湿った風がゆっくり入る。石垣島の暮らしでは、メモ帳に並んだ数字は日によって少し変わり、雨続きや配送の遅れでじわりと増える月もある。窓の外の光と同じように、請求書の数字にも小さな揺れがある。ここでは、石垣島で単身暮らしをしていた当時の生活費を、内訳ごとの目安として静かに整理しておく。

生活費の幅を先に決める

移住の不安の多くは、お金の見通しの曖昧さから生まれる。増えそうな費用と下がりそうな費用を並べて「この範囲なら暮らしていける」という目安を一度決めておくと、数字が見えるぶん迷いはゼロにはならなくても足元は少し落ち着く。

この記事でわかること:

  • 単身・自炊中心で暮らすときの、食費・電気・移動を含めた石垣島の生活費の大まかな月額イメージ。
  • 水道・LPガス・通信など固定費の目安と、季節で増減しやすい支出ポイントの見つけ方。
  • 在庫リストや買い方、エアコン運転と通販送料の確認で、無理なく生活費のブレを小さくする手順。
市街地と水平線、薄い雲が流れる石垣島の午後
石垣島の市街地と海。暮らしと生活費の“背景にある”景色。

石垣島の生活費を「内訳×季節」で単身の月額に落とす

私が石垣島で暮らしていたときの生活費は、「独身・一人暮らし・自炊中心・徒歩と自転車が基本」という前提だった。当時はホテルの客室清掃の仕事をしていて、通勤も買い物も自転車と徒歩が中心だった。最初は勤務先の寮に住みながら働き始め、その後は賃貸に移る可能性も視野に入れながら、寮の相部屋でエアコンと扇風機を組み合わせて湿度と暑さに付き合っていた。島内のスーパーやドラッグストアで買い物をしながら、「このくらいなら続けられる」という感覚を少しずつつかんでいった。

当時の手取りはおおよそ10〜12万円で、そのなかから寮費、食費、光熱費、通信費、移動費を払っていた。生活費全体としては、7〜9万円ほどに収まっていればひとまずよしとし、それを超えそうなら暮らし方を見直す合図にしていた。

収入側のラインや時給の感覚については、どの働き方を選ぶかも含めて、別の記事でまとめている。

石垣島の仕事探し
夕焼けの雲と島の街並みのシルエット
石垣島での仕事探し|時給と生活費で無理しない線引きの基準

石垣島での仕事探しは、生活費と働ける時間を先に置き、下げないラインだけ静かに決めておくと迷いが減り、心が少し楽になる。

7〜9万円のうち、おおよそ6万円前後が食費と光熱費、通信、移動などの「毎月ほぼ必ず出ていく部分」で、残りを日用品や雑費に回していた。特別なことをしているわけではないが、「ここまでが生活の軸で、ここから先は増減してもいいお金」という感覚を持っておくと、月ごとの揺れ方を受け止めやすかった。

感覚としては、夏の時期はエアコンと飲み物・冷たいものにお金が寄っていき、暑さが少し落ち着く時期は電気代がやや軽くなる。どの月も同じ額ではなく、「夏はやや重いけれど、そのぶん他の月を少し軽めにして、年間トータルでバランスを取る」というイメージに近かった。

ここで挙げている金額は、石垣島で暮らしていた当時の価格や相場をもとにした体感ベースの目安であり、現在の物価や賃金とは違っている可能性がある。あくまで一つの例として見てもらえたら十分だ。

電卓とレシートでひと月の支出を確認する手元
電卓とレシート。ひと月の支出をざっくり整える場面。(写真:Pixabay / jarmoluk)

内訳の感覚は、だいたい次のようなものだった。

  • 食費:自炊中心で月3万5,000〜5万円くらい。肉や魚、野菜は島内のスーパーの値段を見ながら、いつもより高い日は品目を別の食材に差し替えて、全体の金額を抑える。夏の時期は、飲料や氷、冷たいものに少し多めに回る月があった。
  • 電気:エアコンと照明を含めて月5,000〜1万円くらい。夏の時期や湿度が高い時期、在宅時間が長い月ほど上振れし、ときどき1万円台前半になったこともある。比較的涼しい時期は5,000円台に近づき、季節によって金額が上下しやすい部分だった。
  • 移動:徒歩・自転車・バスを組み合わせて月3,000〜7,000円ほど。ひどすぎる悪天候でどうしようもないときだけタクシーを使う前提にすると、体力と財布の両方を守りやすかった。台風接近時は早めに買い物を済ませ、移動回数を減らすことで費用も抑えていた。
  • ネット通販の送料(離島送料):月0〜2,000円程度。常温のまとめ買いを基本にし、冷蔵・冷凍は必要なときだけに絞る。台風シーズンなど荷物が遅れやすい時期は、到着遅延も見込んで「早めにまとめて頼む月」が年に数回あった。
  • 水道:おおよそ月1,500〜2,500円のイメージ。シャワーが増える夏場はわずかに上がるが、大きく生活を圧迫するほどではなかった。漏水がないか、ときどき検針票に目だけ通しておく。
  • LPガス(調理+簡易給湯):月3,500〜6,500円くらい。石垣島でも冬の時期や在宅時間が長い月は少し高くなる。明細の「基本料金」と「従量単価」を一度確認しておくと、急な値上がりに気づきやすい。
  • 通信:インターネット回線と携帯電話の基本料金を合わせて月6,000〜9,000円くらい。ガラケーだけで過ごしていた頃と、のちに光回線を引いて料金プランを見直した頃の両方をふり返って、「だいたいこのくらいだった」と感じている幅だ。季節で極端に金額が変わる部分ではないが、見直しのタイミングを決めておくと安心だった。

このあたりを基準にすると、住まいや働き方にもよるが、変動しやすい部分の合計はおおむね6万〜7万円台に収まりやすかった。夏や台風期はやや高め、その他の月は少し軽めという形で一年を通してならすと、当時の私は「生活費はだいたい7〜9万円のあいだなら続けられる」と考え、それを越える月が続くときは、暮らし方や働き方ごと立ち止まって考える目安にしていた。

暮らしが崩れやすい瞬間――入荷と通販で足元が揺れる

生活費の内訳を決めても、実際の暮らしの中では、思わぬところで崩れやすい瞬間がある。私の場合、いちばん効いてきたのは、島内のスーパーの入荷状況と、通販の送料だった。

天候や船便の影響で入荷が遅れ、牛乳や玉ねぎなど身近なものがいつもより高い日がある。そんな日は、買い物かごに入れた瞬間に「今月の食費、大丈夫かな」と少しだけ肩が重くなる。まだ買える範囲ではあるが、何も考えずに積み上げていくと、月末に数字がじわっと大きくなっている。

青いバナナの房を真正面から見たところ
島の畑で実る青いバナナ。入荷や値段の揺れを思い出す景色。

通販も同じだ。日用品を思いついたタイミングで少しずつ注文していた頃は、明細を見て「この分をまとめて頼んでいれば送料がかからなかったな」と思った月があった。離島送料や冷蔵・冷凍の追加料金が必要なときは、商品ページに小さく書かれていたり、ショップから事前に電話やメールで連絡が来たりすることが多いが、自分で条件を確認せずに使っていると、思っていたより送料に持っていかれていたり、到着が遅くなって予定が狂ったりする。

電気代も同じだ。湿度が高い夜に部屋干しが乾かず、エアコンの冷房や除湿運転をいつもより多めに使った月は、請求書の金額が目に見えて上がる。心は少し重く、財布は軽くなる月だ。

こうした揺れは、誰かのせいというより、環境と自分の余力の問題だと感じている。雨の日が続き、洗濯や買い物の負担が重なった月は、生活費も気力も少し削られやすい。「このままのペースだときつそうだな」と感じたときに、一度立ち止まれるかどうかが分かれ目だった。

無理しないための小さな工夫――在庫リストとエアコンと送料

ここからは、暮らしを折らないために私が実際に続けていた、小さな工夫をいくつかに絞って書いておく。「完璧にやる」ことより、「続けても苦にならないかどうか」を基準にしていた。

  • 在庫リストはスマホで済ませる:メモアプリでチェックボックスを作り、主食・おかず・野菜・日用品の4つに分けて○△×で管理する。週1回・10分程度の確認で、同じものを二重に買う回数が減った。
  • 買い物は島内のスーパーを基本に、こだわりの調味料だけ通販:ふだんの食材や日用品は島内のスーパーでそろえ、どうしても欲しい本土の調味料や特定の商品だけ通販を使う。通販分はできるだけまとめて頼み、送料を抑える。
  • エアコンは「在宅・外出・就寝」の3モードだけ意識する:在宅時は弱めの冷房をメインに使い、外出中は止める。就寝時は弱運転やタイマーで切る。細かい温度設定を追いすぎず、この三つだけに絞ったほうが電気代の変化が読みやすかった。
  • 通販は「送料無料ライン」と到着目安を必ず見る:商品ページで離島送料の有無、冷蔵・冷凍の追加料金、送料無料ライン、到着目安をざっと確認し、必要な日より少し前に届くよう逆算して注文する。「このラインを越えたら送料無料」という感覚を忘れないようにしておくだけで、不要な送料はかなり減った。
  • 固定費は四半期に一度だけ点検する:水道・LPガス・通信は、毎月細かく追わず、3か月に一度だけ明細を並べて見る。そこで明らかに上がっているものがあれば、理由を確認する。家計簿アプリではなく、紙とペンだけの簡単な振り返りでも十分だった。

どれも特別なことではないが、「ここまではやる/ここから先はやらない」と決めておくと、迷う時間が減る。画面のチェック印が増えていくほど、月末の心配は少しずつ小さくなった。

振り返りと、これからの暮らしの線引き

振り返ってみると、石垣島での生活費を整えるうえでいちばん大きかったのは、「いくら稼ぐか」よりも、「どのあたりの生活費までなら自分が続けられるか」を先に決めておくことだった。寮費、食費、光熱費、通信費、移動費を合わせて、当時の私は「7〜9万円くらいで収まっていれば、暮らしとしては成立している」と考えていた。

もちろん、物価も賃金も今とは違うし、世帯人数や働き方によって必要なお金は変わる。ここで挙げた数字は、あくまで「当時の私の場合はこのくらいだった」という一例にすぎない。ただ、生活費の内訳を大まかに決めておき、「この範囲を越えそうなら暮らし方を見直す」という自分なりの線を引いておくと、移住後の判断は少し楽になると感じている。

数字に合わせて無理を重ねるのではなく、暮らしの余力に合わせて数字のほうを調整していく。その感覚さえつかめていれば、湿った風の日も、月末の数字は前より少し穏やかに見えてくる。

※料金や契約条件は変更されることがあります。最新の内容は、石垣市や関係機関・事業者の公式案内で必ず確認してください。

※本記事は個人の体験に基づく一般的な情報であり、特定の行動や結果を保証するものではありません。医療・法務・金融など専門的な判断が必要な事項については、必ず公的機関や専門家の情報・助言を確認してください。

(筆者注:移住者の視点で執筆/最終更新:2025-12-03)

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