空が低く、風がざわつく朝だった。湿った空気がベビーカーの布を重くする。暮らしは天気に振られると、せっかく組んだ段取りはすぐ崩れる。だから私は「行けるか」ではなく「行っていいか」で考えるようになった。外出は気晴らしより安全を優先させる。そのほうが、当日の選択が少し静かになる。
撤退ラインと持ち物を先に決めておく
雨や台風前の外出は、「行けるかどうか」より「どこでやめるか」が大事になる。服装と持ち物、行き先と外にいる時間をあらかじめゆるく決めておけば、その日の空模様に振られにくい。いつでも戻れる前提で出かけられると、短い外出でも「やってよかった」に変わりやすい。
この記事でわかること:
- 風や雨が強い日の外出を「気晴らし優先」から「安全優先」に切り替える考え方
- 子連れ外出の時間と持ち物をパターン化し、迷いを減らすためのゆるいルール
- 台風や長雨を前提に、わが家なりの備えと「今日はやめる」の線引きを決めておく方法

風の重さで予定を決める朝――場面を切り取る
石垣にいた頃、朝いちばんにするのは天気アプリと窓の外の見比べだった。空が低く、湿った風がベランダを抜ける日は、ベビーカーの押し心地からして違う。道の水たまりが小さく波立ち、電線がかすかに鳴る。そんな日は、「どこまで遊べるか」より「どこまでなら安全に戻れるか」を先に考えるようになった。
とはいえ、一日じゅう家にこもるのは大人も子どもも息が詰まる。出かけるまでに時間をかけて、外にいるのはあっという間の日もある。それでも外の空気を少し吸えたなら、その日はそれで十分だと自分に言い聞かせる。私は、外出をイベントではなく「暮らしの中の短い寄り道」くらいの位置づけにしておくと気が楽だと感じている。
うまくいかなかった日を、責めずにメモする
基準を決めていても、思ったように運ばない日はある。雨雲を甘く見て帰るタイミングが遅れ、帰宅後にぐずりと片付けが重なったことがあった。タオルや着替えが足りず、濡れた服のまま抱っこが続き、私の体力もじわじわ削られた。

あとから振り返ると、つまずきは「少しずつの遅れ」が重なった結果だった。出発をのばしたこと。雨脚が変わっても「もう少しだけ」と粘ったこと。撤退を「もったいない」と感じてしまったこと。流れで動いた自分を責めすぎず、「あの日はこういう順番だった」と静かに書き留めておくと、次の判断が少し軽くなる。
- うまくいかなかった日は、「出発」と「撤退」のタイミングだけを簡単に振り返るようにしている
- 足りなかった持ち物は、「次回のトップ3」を書き替える程度にとどめるようにしている
- 「やめどきでやめられなかった自分」は、反省しても責めすぎないことを意識している
時間と持ち物を“わが家のパターン”にする
わが家では、風の強い日の外出に簡単なルールを置いた。外にいる時間は「おおよそ一時間くらいまで」。風が強くなってきたら、用事が少し残っていても帰り道を優先する。予報の強い言葉を見た日は、「今日はやめておく日」に振り分ける。ふだんから「行く日」と「やめる日」が両方あると決めておくと、当日の迷いが減った。
持ち物も、すべてを完璧にそろえようとはしない。替えの上下とタオル、防水袋だけは必ず持つ。他は気温や行き先で足す。娘の靴下の予備を小さな袋にまとめておくだけでも、足元が濡れたときの気持ちの荒れ方が違った。必要最低限を決めておけば、「あれもこれも」と悩む時間が短くなる。
- 終了の目安時間を、出かける前に一度だけ決めておくようにしている
- 持ち物は「替えの服・タオル・防水袋」の三つを、わが家の最優先セットにしている
- 迷う物は基本置く。「自分が片手で持てる量」を上限の目安にしている
台風や長雨を前提に、家の中を少し満たす
石垣では、熱帯低気圧や台風の話題が早めに聞こえてくる。進路が島に寄りそうだとわかった日は、外出の予定を減らし、家の中を静かに整えるモードに切り替えた。停電や船・飛行機の遅れで、欲しい物がすぐ手に入らないこともあるからだ。

と言っても、大がかりな備蓄ではない。子どもの日用品と、家族で食べられるものを「数日分くらい」を目安にそろえる。水と簡単な主食、火を使わなくても食べられるものを少し多めに棚に入れておく。娘が好きなおやつを、いつもより少しだけ多く買っておく。それだけで、台風前後の「買えないかもしれない」という不安は少し和らいだ。
- おむつ・飲み物・軽いおやつは、数日分くらいを目安に用意しておくようにしている
- 停電を想定し、ライトと電池をひと組のセットとして決めている
- 混み合う時間帯を避け、短時間で持ち帰れる量におさえることを心がけている
「やめる日」を前提にしたほうが、心は守りやすい
風や雨の強い日に外へ出るかどうか。正解は家庭ごとに違うと思う。わが家では、「気晴らしのために無理をしない」「撤退は失敗ではなく、うまく戻れた成功」と考えるようにした。早めに帰った日は、洗濯や片付けが軽く、子どもの機嫌も守りやすかった。
島島に限らず、天気に左右されやすい土地で暮らすなら、「今日はやめる」で終わる日を前提にしておいたほうが、心がすり減りにくいと私は感じている。外に出られなかった日は、家の中を少し整える日に振り替える。短い時間の料理遊びをするときは、声かけの流れだけ別に決めてある。
島に限らず、天気に左右されやすい土地で暮らすなら、「今日はやめる」で終わる日を前提にしておいたほうが、心がすり減りにくいと私は感じている。外に出られなかった日は、家の中を少し整える日に振り替える。おもちゃの場所を戻したり、台所で短い料理遊びをしたり、外に出られないなりの「少しだけ動くこと」を用意しておく。
料理遊びをするときは、声かけの流れだけ別に決めてある。その具体例は、別にまとめた「料理遊びの声かけ台本」に残している。
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2歳の親子の料理遊び声かけ台本|短い合図で終わりまでつなぐ
2歳の料理遊びを、短い声かけと終わり方の型で静かに回す記録。途中でやめても「今日はここまで」と静かに言いやすくする。
風が落ち着いたら、また改めて外に出ればいい。そのくらいの距離感で天気と付き合えたとき、暮らしは少しだけ続けやすくなると感じている。
今日やる1つ
【所要10〜15分/準備メモ1枚】
私は、玄関に小さなメモを貼るようにしている。「終了の目安時間」「中止のサイン」「持ち物トップ3」の三行だけを書いておく。次に外出する日、その紙を一度だけ見てから出かけると、迷い方が少し変わる。
迷ったら、今日はおしまいでいい。
※本記事は、一家庭の体験と日々の観察に基づく一般的な記録です。育児・健康・発達に関する判断は、医療機関や専門家、各家庭の方針を優先してください。
(筆者注:生活者の視点で執筆/最終更新:2025-11-29)
―― 我門(がもん)|暮らしをことばに残す人
迷いを減らす補助線として、近い論点の二本をそっと添えておきます。
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