夕方の石垣島のスーパーは、冷房の風と惣菜の匂いが混ざり合っている。棚の端に「品切れ」の札が並ぶ日もあれば、いつもの牛乳が別の銘柄に入れ替わっている日もある。移住してすぐの頃は、そのたびに店をはしごして、少し疲れて帰っていた。暮らしの土台は、買い物の組み立て方でだいぶ変わる。
店を絞り価格は帯で見る
よく使う店を2〜3か所だけ決めて、牛乳や卵など主力の品だけざっくりした価格の帯を覚えておくと、チラシを追いかけなくても、その日どこで何を買うかを静かに決めやすくなる。
店を増やして安さを追いかけるより、「どの店で、どの品をどれくらい買うか」を先に決めておくと、天気や在庫に揺らされても、買い物に振り回されにくくなる。
この記事でわかること:
- 石垣島での買い回りを前提に、よく使うスーパーを2〜3か所に絞り、品ごとの担当をゆるく分ける考え方。
- 牛乳や卵など主力数品の「だいたいの価格帯」をメモしておき、その日の相場感で買い方を決めるコツ。
- 欠品や台風後の品薄を前提に、「無いなら買わない」と在庫の持ち方で暮らしを止めにくくする線引きの例。

石垣島のスーパーで「行きつけ」を決める
石垣島にいた頃、私の暮らしの「定点」は家の近くのスーパーだった。冷房の当たり方や惣菜コーナーの匂い、レジに並ぶ人の列や歩く速さから、その日の空気にどれくらい余裕があるのかが、ぼんやり伝わってくる。暮らしの重さも、まずここで測っていた。
最初のうちは、かねひで、マックスバリュ、JAのファーマーズマーケット「ゆらてぃく市場」など、目についた店を片っ端から回っていた。けれど続けていると、どの店も少しずつ得意分野が違うとわかってくる。生鮮、日用品、地場野菜。それぞれの担当を決めるだけで、買い物の迷いはかなり減った。
私の場合は、生鮮はこの店、日用品はあちら、地場野菜は「ゆらてぃく市場」と、2〜3か所に絞ってしまう。買い回りは週に2〜3回。行きつけを決めると、「今日はこの範囲だけ回ればいい」と線が引ける。雨の日や仕事で疲れた日は、一つの店だけで終わらせることもある。
島の価格は、本土より少し高めで、同じ品でも店によって差がある。牛乳や卵、肉類、食パン、豆腐、たまねぎなど、よく買う数品だけ「これくらいなら買う」「今日は少し高め」と感じる目安を頭かメモに置いておくと、チラシを細かく追わなくても、その日の買い方を決めやすくなる。

食費だけでなく、電気代や移動費を含めた生活費の全体像は、「石垣島の生活費の実態|食費・電気代・移動費の目安と抑え方」に別途まとめている。
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石垣島の生活費の実態|食費・電気代・移動費の目安と抑え方
石垣島の生活費を内訳ごとに整理し、単身の月額目安と、通販送料やエアコン代のブレを抑える具体的な小さな工夫をいくつか示す。
暮らしが崩れやすい瞬間を認める
石垣島のスーパーは、いつも同じように棚が埋まっているとは限らない。とくに台風の予報が出ると、レトルト食品やインスタントラーメン、パスタなどの保存できる食品が、あっという間に棚から消えていく。少し遅れて、牛乳やパン、納豆など日常的に使うものも、いつもより早いペースで減っていく。
そのあと船が止まると、次の便が来るまでのあいだ、品揃えはしばらく寂しいままだ。台風の前には、棚の商品が一気に減って、空きが目立つ日も多かった。
移住して間もない頃の私は、欲しい物が見つからないと、別の店へ、さらにもう一店へと足を伸ばしていた。結局どこでも見つからず、疲れて惣菜だけ買って帰る日もある。家に着く頃には、節約したかったはずの気力も時間も、かなり削れていた。
島の暮らしは、流通の揺らぎと一緒にある。お店の在庫や流通の事情をこちらから変えることはできないので、「今日はここまで」と決めて帰る線をどこに置くかが、気持ちの安定に直結する。買えなかったものを引きずるより、「家にあるもので組み立て直す」に切り替える方が、結果として暮らしが崩れにくかった。
無理しないための小さな工夫

- 私は、よく使うスーパーを2〜3か所に絞り、「ここではこれを買う」とざっくり役割を決めている。生鮮を扱う店、プライベートブランド商品の多い店、地場野菜が充実している店、といった具合だ。
- 牛乳や卵、肉類、食パン、豆腐、たまねぎなど、主力の数品だけはおおよその価格帯をスマホにメモしている。「今日は高めだな」と感じたら見送る判断材料になる。
- 欠品している日には「無いなら買わない」を原則にする。どうしても必要な一品だけ近所の商店で少量を補い、それ以外は家にある乾麺や缶詰、冷凍の主菜に組み替える。
- 台風の予報が出たときは、調味料や乾麺、缶詰やレトルト食品など、すぐには傷みにくいものだけ少し前倒しで買っておく。冷蔵庫をパンパンにせず、余白は残す。
- 在庫管理は細かくやり過ぎない。牛乳、米、冷凍主菜、乾麺など、途切れると困るものだけを「安全在庫」として決めておき、そこを下回りそうなときだけ意識して補充している。
振り返りと、これからの暮らしの線引き
行きつけを決めて、価格の帯をおおまかに掴み、「無いなら買わない」と決めてから、買い物に振り回される感覚は少しずつ減っていった。天気や仕事の都合で買えない日があっても、「今日はこの範囲で組み立てる」と思えれば、大きくは崩れない。
月の食費の波も、以前より少しだけ穏やかになった気がする。細かい家計簿をつけていたわけではないが、数か月続けているうちに、「今月は少し軽かったかもしれない」と感じることもあった。それ以上に、「あれもこれも買ってしまった」という後悔が減った。
店を増やすより、迷いを減らす。石垣島での買い物は、完璧さより「これくらいでいいか」と静かに決められるかどうかが、暮らしの軽さにつながっていた。
買い回りの線を先に決めておけば、天気や在庫に揺らされても、食卓は静かに続いていく。島の歩幅に合わせて、暮らしのリズムを少しずつ整えていけばいい。
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(筆者注:移住者の視点で執筆/最終更新:2025-12-10)
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