移住と暮らし

石垣島の停電備蓄|温かい食事が作れる形を残すローリングストック

台風が近づく前夜、窓の外の風が少し低い音を立て、湿った空気のせいでいつもの明かりが頼りなく感じる。停電そのものより、冷蔵庫が静かになる瞬間のほうが気持ちをざわつかせた。石垣島の停電備蓄は、結局「温かい食事が作れる形を残せるか」に収束していった。

温かい食事が作れる形を残す

非常食を増やす話というより、熱源と水の最低ラインを先に決め、温かい食事が作れる形と、洗い物を翌日に持ち越さない「片付けの出口」を残しておくことで、台風の日の判断を短くする。

鍋から湯気が立ち上がる台所の一角
白い湯気がゆっくり伸びていく。(写真:Pixabay / werbeguru)

この記事でわかること:

  • 熱源(カセットコンロ等)と水の最低ラインを決め、停電でも温かい食事が作れる形を残す線引き
  • 主食・主菜・汁物と飲料水をローリングストックで回し、停電の時間が読めない日でも食事が回る段取り
  • 紙皿やラップで洗い物を減らし、片付けの出口を作って翌日に余力と気力を少しだけ残す

石垣島の停電の夜、家の空気が変わる

停電が来ると、家の中の音が変わる。扇風機が止まり、冷蔵庫の小さな振動が消えて、湿った空気だけが残る。窓を開けても風は重く、台所の手元は暗い。明かりの問題というより、手順が崩れる感じがある。

懐中電灯の白い光は便利だけれど、影が濃くて落ち着かない。冷たい床に立ったまま、何から始めるか迷っている時間がいちばん疲れる。だから私は、停電そのものより「順番が崩れない形」を先に作るほうへ寄せてきた。

独身の一人暮らしだった頃も、結婚して子どもがいる今も、台風の進路予想が出て「これは来るな」と感じたら、風が強まる前に同じ準備に戻っていた。台所の一角に、ライトとライター、カセットコンロ(または固形燃料)をまとめて置く。料理を「ちゃんと作る」より、温かい食事が作れる形へ寄せる。

台風前夜は、食事の段取りと同じくらい、窓まわりの不安を先にほどいておくほうが落ち着きやすい。

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暮らしが崩れやすい瞬間を、先に認める

停電時にいちばん困るのは、食材の不足より「水と片付け」だった。鍋を洗う水が惜しくなり、流しに物がたまると、気持ちも一緒に重くなる。暗い中で後片付けを抱えると、翌日に余力が残りにくい。ここで言う「片付けの出口」は、洗い物を翌日に持ち越さない形のことだ。

体感としては、停電があっても半日ほどで戻ることが多かった。例外は、かなり大きい台風のときで、私は3日ほど続いた記憶がある(細かい年や号数は、もう曖昧になっている)。だから私は「長く続く前提で全部を抱える」より、まず暮らしが崩れない形を先に作るほうに寄せた。

子どもがいると、もう一段だけ難しくなる。普段のルーティンが崩れると落ち着かなくなるし、説明より先に「いつもの味」が効く夜がある。栄養の話というより、家の空気を戻すための手順だと思っている。

無理しないための小さな工夫

ここからは、停電を前提にして私が決めている小さな工夫を並べる。どれも正解ではなく、迷いを減らすための“形”として置いている。

  • 熱源は「何を持つか」より、「温かい食事を何で作るか」から決めている。中心はカセットコンロで、固形燃料や(あれば)ポータブル電源は補助に回す。
  • 飲料水は普段も使い、減った分だけ戻す形でローリングストックにしている。目安として、1人1日3L×3日を下回らないように備えている(外に出にくい日の余裕として)。
  • 洗い物の水は、買い置きの飲料水に頼らず、停電前に水道水をためておく(飲む水とは別枠で考える)。紙皿やラップも使って、水を使う場面を増やしすぎない。
  • 主食は炊飯にこだわらず「温めれば成立」に寄せる。パックごはん、乾麺、即席粥など、熱源の強さで選べる幅を残す。
  • 主菜と汁物は、缶詰・レトルト・即席を混ぜて「鍋一つで終わる形」に寄せる。子どもがいる時期は、ふりかけのような“安心スイッチ”を少しだけ残す。
  • 点検は私の場合、年2回くらいを目安にしている。季節が切り替わる手前に、熱源・水・主食だけ軽く見直しておくと、いざという日の迷いが減る。
卓上に置かれた水のペットボトル
卓上の透明なボトルに、残った水が静かに映る。(写真:Pixabay / barskefranck)

ここまで整えておくと、停電の料理や非常食の話が「正解探し」から外れてくる。温かい食事が作れる形と片付けの出口さえ守れれば、あとは雑でもいい日にする。

振り返りと、これからの暮らしの線引き

私の線引きは2つだけだ。ひとつは、停電でも温かい食事が作れる形が残っていること。もうひとつは、翌日に余力を残すために片付け動線を壊さないこと。備蓄は増やすほど安心になると思っていたけれど、実際には「回せる形」のほうが長く続いた。

台風の夜に迷うとき、私は台所を一周して、鍋と火と水と皿の位置だけを確かめる。手が止まりそうな場所が見えたら、そこだけ直す。それ以上は、やらない。

温かい食事が作れる形が残っていれば、あとは静かに寝るほうへ戻れる。

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※本記事は個人の体験に基づく一般的な情報であり、特定の行動や結果を保証するものではありません。医療・法務・金融など専門的な判断が必要な事項については、必ず公的機関や専門家の情報・助言を確認してください。

(筆者注:移住者の視点で執筆/最終更新:2025-12-17)

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