
朝の光がカーテンのすき間からやわらかく差し込む。アラームより先に小さな足音がして、2歳の子は起きてすぐ、ほとんど全開で動き始める。今日は買い物に出たいのに、外出前の支度だけがいつも渋滞する。着替えと持ち物、時間の読み違い。私は「子が動かない」せいにしそうになりながら、ほんとうは親の段取りのほうを変えたほうが楽だと感じるようになった。今日は、前夜に半分を移した外出準備の話を書く。
前夜に半分まで終える
小さな子との外出は、子どもにがんばらせるより、親があらかじめ流れを決めておき、前夜にできるところまでそっと進めておくと、当日の支度が静かにまとまり、遅れや忘れ物への不安も少しやわらぐ。
この記事でわかること:
- 外出前の支度を前夜と当日に分け、朝は決めておいた流れに静かに乗せる考え方
- 玄関近くのボックスと簡単なメモで、持ち物と声かけをゆるくパターン化する工夫
- うまくいかない朝や途中でやめる日も前提にしながら、今日やることをひとつに絞る方法
朝のにぎやかさと、出発前の空気を切り取る
在宅勤務の日の朝は、静けさよりもにぎやかさが先にくる。小さな足音とおもちゃの音の向こうで、パソコンのファンや冷蔵庫のうなりがかすかに続いている。そのなかに、「外に出る準備」という工程が差し込まれる。できれば、軽い散歩や買い物の前のひと仕事くらいの位置づけにしておきたいのに、現実にはそこが一番あわただしくなりやすい。そういう朝に、2歳との外出準備をどこに置くかで、その日の軽さが少し変わってくる。

小さな子と暮らしていると、外出は特別なイベントだけではなくなる。近所のスーパーや通院、公園までの短い寄り道が、週に何度かあるのがふつうになる。私は、こうした日常の外出こそ、静かに出られるかどうかが暮らし全体の温度を決めているように感じている。
支度が進まない朝を、そのまま認める
うまくいかない朝、支度が進まない朝は、決まって「全部を直前にまとめてやろうとした日」だった。子どもがまだパジャマのままの状態で、私は台所と玄関を行ったり来たりしながら、水筒とおやつとタオルをまとめようとする。そのあいだに、子どもは別のおもちゃを見つけて、着替えは進まない。
「早くしようね」と何度もくり返すと、声はかけているのに空気は重くなる。時計ばかり見ているうちに、気持ちのほうが先にくたびれていく。帽子を忘れて取りに戻り、タオルを一枚追加し、バッグの中を入れ替える。家を出る前なのに、もう一日の体力を半分くらい使ってしまったような感覚になることもあった。

全部を完璧に整えようとすると、ちいさな抜けが目につきやすい。私は「今日だけだから」と直前に足した荷物が重く感じられ、玄関でため息をついたことが何度もある。うまくいかない朝を振り返ると、原因はたいてい前夜の自分にあったと気づく。
前夜のひと手間と玄関前ボックスで軽くする
そこで、外出準備の半分を前夜に移した。寝る前の静かな時間に、翌日の自分を助ける作業だけをまとめてしまう。やることは多くない。
- 玄関の近くに小さなボックスをひとつ置き、「外出用」と決めておく
- オムツ・水筒・おやつ・帽子・タオル・着替えなど、外に持ち出す物をひとまとめのセットにしておく
- 水筒は夜のうちに洗って逆さに置き、朝は中身を入れるだけにしておく
- 着替えは上下を一組にしてたたみ、ボックスの中ですぐに取れる位置に置いておく
- スマホのメモアプリに、持ち物の名前を短く書き出しておく
スマホのメモには、こんなふうに書いておくと迷いが減った。
- 外出セット:オムツ/水筒/おやつ/帽子/タオル/着替え
- 今日だけ足す物:母子手帳/診察券/お薬手帳
このセットがそろっていれば、近所への買い物や散歩、公園遊びにはだいたい対応できる。通院など「今日だけ足す物」が必要な日は、玄関でメモを見ながら必要なものを追加する。追加は日替わりだが、土台のセットは変えない。
子ども側への工夫も、前夜準備とセットにしておく。お気に入りの靴下を二つ選んでおき、朝はどちらを履くかだけをたずねる。帽子も二つ見える場所に出しておく。ことばで説得するより、目の前にある二択のほうが、小さな子にはわかりやすいことが多かった。
ぐずりが強い時間帯そのものの運び方や、予告の声かけの流れは、別の記事でまとめている。
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魔の2歳児との夕方を回す記録|「今日はここまで」と決めておく
前もって一言そえて二択で進め、癇癪は安全を守って待つだけ。夕食の準備と片付けとお風呂までできたら「今日はここまで」にする
前夜の静かな時間にここまで終えておくと、当日は「決めておいた順番に乗るだけ」になる。玄関前ボックスを見て、いつもの持ち物がそろっているのを確認できた朝は、時計を見る回数が少し減ったと感じている。
小さく振り返り、これからの線引きを決める
外出準備を前夜と当日に分けてみると、「どこまでできれば十分か」の線が少し見えやすくなった。いつものセットがそろっていれば合格、追加の持ち物は余裕がある日に足すくらいの気持ちでいると、玄関での迷いが減る。
一度、前夜にボックスとメモを整えたまま寝た朝があった。起きてからは、そのメモを声に出して読み上げるだけで支度が進み、気づいたら時計をほとんど見ずに家を出られた。たいした工夫ではないのに、「今日はここまでで十分だ」と思えるだけで、外出の重さがだいぶ変わる。
うちでは、「途中でやめる日もあっていい」と先に決めておくことにした。散歩の途中で子どもの元気が尽きたら、早めに戻る。スーパーが混んでいたら、今日の買い物は一部だけにする。短く戻れた日は、洗濯も片付けも軽い。「やめる」は失敗ではなく、その日の体力と気分に合わせた選び直しだと考えるようにしている。
私にとっての結論は、外出を増やすことより、暮らしのペースを守ることだった。親子でのおでかけは、子どもを鍛える場ではなく、親が段取りを整えて「行ってもいいし、やめてもいい」状態をつくる場に近い。そう決めておくと、行けた日も行けなかった日も、どちらも受け止めやすくなる。
今日やる1つ
【少しの時間とメモ1枚があればできる】
今夜、玄関の近くに小さなボックスをひとつ置き、「外出用」と決める。よく持ち出す物をまとめて入れ、スマホのメモアプリに同じ名前を書き出しておく。明日の朝は、そのメモを声に出して確認しながら、決めておいた順番で支度を進めてみる。
忘れ物がなくなることを目指さなくていい。玄関の空気が少し軽くなっていれば、その分だけ進んでいる。今日はここまで。明日はもう少し静かに出られる。
※本記事は、一家庭の体験と日々の観察に基づく一般的な記録です。育児・健康・発達に関する判断は、医療機関や専門家、各家庭の方針を優先してください。
(筆者注:生活者の視点で執筆/最終更新:2025-12-08)
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