子育ての記録

魔の2歳児との夕方を回す記録|「今日はここまで」と決めておく

2025年9月27日

夕方の台所は、鍋の湯気と水の音でいっぱいになる。窓の外は少し暗くなり、部屋の中だけがゆっくり明るさを保っている。リビングからは、まだ遊び足りない二歳児の声が聞こえる。私も仕事の余韻が残っていて、声をかけるタイミングを少し外すと、あっという間に空気がかたくなる。そんな時間帯こそ、あらかじめ決めた型があると、毎日をなんとか回しやすいと感じている。今日は、わが家の「魔の2歳児」との夕方の回し方を、一日の記録として残しておく。

夕日に照らされる幼児のシルエット
低い太陽が雲を縁どる夕方。(写真:Pixabay / Elisabell)

夕方は「ここまで戻れたら十分」という場所を先に決めておく。

毎回うまくいかせることは、どうがんばっても難しい。だから私は、今日の夕方はここまでできたら十分、という場所を先に決めておくようにしている。いきなり終わらせるのではなく、前もって一言そえてから二択で進める。うまくいかない日も含めて、「ここまで戻れたならよし」と考えておくと、癇癪が起きたあとでも暮らしをもう一度つなぎなおしやすくなる。

この記事でわかること:

  • 夕方の台所と玄関を一日の終わりの場面とみなし、「今日はここまで」と静かに止める位置を決めておく考え方
  • 終わりの前に短い一言をそえ、動くときは二択で声をかける。その途中で癇癪になったときは、まず周囲の安全を確保して静かに待ち、落ち着いたら同じ二択をもう一度出す流れ
  • 夕食の準備・片付け・お風呂までをその日の最低ラインにし、「ここまでできたら十分」と家事と気持ちの線を引いておくやり方

夕方の台所と玄関を切り取る――静かに回したい時間帯

仕事を終えてキッチンに立つころには、換気扇の音とシンクの水音が静かに続いている。コンロの上では味噌汁が小さく泡を立て、台所の床には、昼のパンくずが少しだけ残っている。リビングのラグには積み木が転がり、玄関には小さな靴が並んでいる。

夕方、パソコンから目を離して椅子から立ち上がったときに、一度だけ深呼吸をしてから子どもに声をかけるようにしている。そのタイミングを「ここからは家の時間をゆっくり進める」という合図にしておくと、そのあとの言葉が少し静かになるからだ。夕方は、子どもも大人も体力が落ちている時間帯だと分かっているので、「ここから先はゆっくり進める」と心の中で決めておくくらいがちょうどいい。

外出や通園がある家庭なら、家と外の切り替えはもっとはっきりしているのかもしれない。わが家のように在宅中心で一日を過ごす場合は、玄関や台所といった「場」で区切りをつけておくほうが、暮らしの温度を保ちやすいと感じている。夕方の数時間を、一日の中の「ひとつの場面」として切り取っておくイメージだ。

室内の玄関床に並ぶ子ども靴とピンク色の足元
床の模様と靴の距離感に、帰宅の静けさがにじむ。(写真:Pixabay / FeeLoona)

うまくいかない夕方と癇癪をそのまま置いておく

どれだけ型を決めていても、うまくいかない夕方はある。帰りたくなくて玄関で座り込み、靴を投げ、声をあげて泣き続ける日もある。ご飯の前におもちゃを片付けたくなくて、スプーンを床に落とすこともある。こちらが急いでいる日ほど、そういう出来事はなぜか重なりやすい。

以前の私は、その最中に理由を説明したり、「ほら、もう遅いよ」と急がせたりして、かえって長引かせていたところがある。理想の夕方は、いまだに数えられるほどしかない。それでも今は、「うまくいかなかった日」を失敗ではなく、「ここで止められた日」として扱うようにしている。

癇癪が始まったら、まず周りの危ないものを端に寄せ、頭や手がぶつかりにくい場所に移動する。抱っこは、本人の体が少しゆるんできてからでよい。私が声をかけるのは「ここにいるよ」の一言だけにして、それ以上の説明は、落ち着いたあとに一文そえるくらいで足りると感じている。

泣き続けているあいだは、こちらも静かに呼吸を整える時間だと割り切る。泣き終わったあとに、「さっきは嫌だったね」「ここまで戻って来られたね」とだけ短く言う。何が正解かは分からないが、「安全は守れた」「同じ二択までは出せた」と小さく区切って振り返ると、次の夕方にも同じ型を出しやすい。

小さな工夫とゆるい線引きで夕方を軽くする

夕方を少しでも軽くするために、わが家では次の三つだけを意識している。いずれも「いつも必ず」ではなく、「迷ったらここに戻る場所」として置いている。

  • いきなり終わらせず、短い一言を前にそえる。「そろそろ終わりにするね」「あと少しでおしまいにするよ」など、ほぼ同じ言い方にしておく。
  • 動くときは二択で進める。「抱っこで行く? 手をつないで歩く?」のように、どちらを選んでも前に進む二つに絞る。毎回一から考えずに済む。
  • 家事は「夕食の準備」「食べる場の片付け」「お風呂の支度」までを、その日の最低ラインにする。それができたら合格とみなす。ほかは、できたら十分なくらいの位置に下ろす。
大人の指をぎゅっと握る子どもの手元の近景
交わす手があると、次の一歩が少し軽くなる。(写真:Pixabay / Myriams-Fotos)

途中で崩れた日は、主菜を温めるだけにしたり、食器を大きいものだけにしたり、床は気になる場所だけ拭いたりする。「全部やる」より、「ここまでで切り上げる」ほうを優先する。

朝のうちに少しだけ前倒ししておくこともある。服を二着だけ並べて選んでもらったり、玄関の靴置きや座る場所を整えておいたりするだけでも、夕方の選択肢は少し減る。こうした工夫も「いつもそうする」ではなく、「できる日にだけやれればいい」と決めておくと、気持ちが軽い。

朝の支度そのものをもう少し軽くしておきたいときは、前夜に半分済ませる段取りを『2歳児の外出準備|前夜に半分済ませて、朝をもう少し軽くする』にまとめている。

外出前の時短術
外出前にそろえた子どもの帽子と服のセット
2歳児の外出準備|前夜に半分済ませて、朝をもう少し軽くする

前夜に持ち物と流れを整え、朝は静かに支度を進める。途中でやめてもいい外出として、親子のペースを守る。心の余白も少し残す。

撤退も含めて暮らしを回す――自分の基準を決めておく

魔の2歳児と呼ばれる時期は、「毎回うまくいかせる」よりも、「崩れたあとにどう戻るか」を決めておいたほうが心が軽い。私は、「撤退は失敗ではなく、うまく戻れた成功」とみなすことにしている。

外遊びが長引きそうなら、「今日はここまでで帰ろう」を早めに決める。家事が積み上がってきたら、「今日は温めるだけにする」「食器は大きいものだけにする」のように、最低限のラインを一度口に出してから動き出す。言葉にした瞬間、気持ちが少しだけ現実とそろう。

月に一度くらい、パートナーと短く振り返る時間をつくる。「最近いちばん困った場面」と「次はどの二択でいくか」を話すだけでも、夕方の回し方は少しずつ調整されていく。三歳が本番という声も聞くので、今の二歳期は、その準備運動くらいの気持ちで構えておきたい。うまくいった日より、「ここまで戻れた日」を数えていくほうが、私には合っている。

今日やる1つ

【所要1分/準備0】

スマホのメモに、この一文を保存しておく。「そろそろ終わりにするね。『次でおしまい』って言ったら終わりにするよ。」今夜は、動画やテレビを終わらせるときだけ、この一言をいつもと同じ声で一度だけ言ってみる。

  • メモのテンプレ(3行)
    ①合図:そろそろ終わりにするね。『次でおしまい』って言ったら終わりにするよ。
    ②二択:抱っこで車まで行く? 手をつないで歩く?
    ③戻し:今日はここまでにする。残りの家事は明日に回す。

うまくいっても、いかなくても、明日もまた同じ一言からはじめてみる。それくらいのゆるさで続けていければ十分だと思っている。

※本記事は、一家庭の体験と日々の観察に基づく一般的な記録です。育児・健康・発達に関する判断は、医療機関や専門家、各家庭の方針を優先してください。

(筆者注:生活者の視点で執筆/最終更新:2025-12-09)

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